2025年2月23日

宅地造成法改正後の現状と課題安全な宅地造成に向けた展望

宅地造成における安全確保は、国民生活の基盤を支える重要な課題です。
近年、大規模な土石流災害の発生により、盛土の安全性に対する関心がかつてないほど高まっています。
特に、宅地造成に関連する法規制は、その安全性確保に大きな役割を果たします。
そこで今回は、宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)の改正内容を中心に、その社会への影響、施行後の現状と課題、そして今後の展望について考察します。

 

宅地造成と盛土規制法改正概要

 

改正前の法改正の問題点

 

改正前の宅地造成等規制法では、盛土による災害リスクに対する規制が十分に整備されず、様々な問題点が指摘されていた。
そのため、適切な方法で盛土が実施されず、管理が放置されるケースも見られました。
また、改正前の法律では、許可基準が曖昧であり、どのような条件を満たせば安全とみなされるのかが明確に示されていない。
特に、地盤の強度や排水設備の整備など、安全確保に重要な要素について、全国統一の厳格な基準が設けられず、地域ごとに基準が異なり、リスクが十分に管理されていないケースが多く見られました。
さらに、違反行為に対する罰則も比較的軽度であり、不適切な盛土を行っても、それに対して処罰が抑止力として機能しにくい状況が続いていた。
行政からの正当な命令に従わなかった場合でも、罰則が弱いため、実際には正しい対応が取られず、危険な状態の盛土がそのまま残されるといった問題も発生していた。
これらの問題が積み重なり、全国的に危険な盛土が多く存在し、住民の安全が脅かされている現状が浮き上がったことで、今回の法改正が実施されるに至ったと考えられます。
熱海市の土石流災害を契機に、国は盛土による災害リスク判断を見直し、より厳格な規制を適用することを目的として「盛土規制法」を改正しました。
この改正の最大のポイントは、土地の利用に関係なく、全国一律の基準で危険な盛土を規制することにあります。

 

改正の目的と具体的な内容

 

盛土規制法の改正は、熱海市での土石流災害を契機に、土地の用途に関わらず、危険な盛土を全国一律の基準で包括的に規制することを目的としています。
改正のポイントは、「スキマのない規制」、「盛土等の安全性の確保」、「責任の所在の明確化」、「実効性のある罰則の措置」の4点に集約されます。
具体的には、都道府県知事等が、土地の用途に関わらず、盛土等により人家等に被害を及ぼしうる区域を規制区域として指定し、その区域内で行う盛土等を許可の対象とします。
これにより、農地や森林など、従来規制の対象外であった領域も包括的に規制対象とすることが可能になりました。
また、地形・地質等に応じて、災害防止に必要な許可基準を設定し、施工状況の定期報告、中間検査、完了検査を義務付けることで、安全対策の徹底を図っています。

 

罰則強化と責任の明確化

 

改正された盛土規制法では、罰則が大幅に強化されました。
無許可行為や命令違反に対する罰則は、条例による罰則の上限より高い水準に引き上げられ、最大で懲役3年以下、罰金1,000万円以下、法人の場合は3億円以下の罰金が科せられることとなりました。
これは、違法行為に対する抑止力を高めることを目的としています。
さらに、盛土等が行われた土地について、土地所有者等が安全な状態に維持する責務を明確化し、災害防止のため必要な場合は、土地所有者だけでなく、原因行為者に対しても是正措置を命令できるようになりました。
責任の所在を明確にすることで、安全対策の徹底を促す狙いがあります。

盛土規制法社会への影響

 

不動産業界への影響

 

盛土規制法改正により、不動産業界には大きな影響が及んでいます。まず、盛土を含む土地の開発や取引に関する審査がかかる

これまで規制が緩やかだった地域でも、盛土の安全性を確保するために地盤調査や補強工事が求められるケースが増加しており、開発業者にとっては負担の増大につながっています。

また、不動産取引に関しても、盛土が行われた土地の評価や価格に影響を与えています。 規制が強化されたことで、過去に盛土が行われた土地の売買に関しては、安全性の確認が必須となり、地盤調査や補修工事のコストが価格に反映されるようになりました。

それに加えて、宅地造成を含む不動産開発においては、行政の監督が厳しくなったことで、無許可の盛土があった場合には即座に的確な命令が下され、事業の停止や修正を求められる場合もあります。そのため、開発業者や不動産事業者は、法改正の影響を考慮し、安全対策を徹底することが求められています。

宅地造成法規制の展望

 

技術革新と法規制

 

今年、建設業界や都市計画分野では、技術革新が急速に進展しており、宅地造成においても最新技術の導入が進んでいます。
特に、ドローンによる地形測量やAIを活用した地盤解析技術は、従来の調査手法と比較して、より正確で迅速なデータ収集を可能にしました。
また、BIM(Building Information Modeling)やGIS(地理情報システム)を活用することで、宅地造成の設計段階から地盤の状態を詳細にシミュレーションし、安全性を確保する動きも進んでいます。
例えば、斜面における盛土の強度計算や、地下水の流れを優先した土地利用計画など、より精密な検討が行われるようになっています。
さらに、センサー技術の進化により、宅地造成後の土地の動きを継続的に監視するシステムも導入されます。
例えば、地盤の沈下や崩壊の兆候を感知するセンサーを設置し、異常が発生した際には即座に警告を出す仕組みを構築することで、事後対応ではなく予防的な管理が可能になります。

このような技術革新を宅地造成の規制と調和させることで、安全性の向上とともに、開発許可の審査プロセスの効率化も期待されます。
宅地造成や盛土に関する規制は、今後も継続的な見直しが行われる可能性が高いと考えられます。

 

今後の法改正の可能性

今年の自然災害の増加や社会の安全意識の高まりを受けて、宅地造成や盛土法に関する規制は今後も強化される可能性が高いと考えられます。
特に、2021年の熱海市の土石流災害を契機とした「盛土規制法」の改正に引き続き、今後の法改正が検討される可能性のある主なポイントを挙げています。

1.誰かの盛土への追加規制
現在の規制では、新たに造成される宅地や盛土に対する基準が免除されていますが、過去に行われた盛土については十分な安全確認がされていないケースが多くあります。

そこの盛土の安全性評価を義務化、
一定の年数が経過した盛土の再検査制度を導入
地盤改良や補強工事の義務付けによる安全確保
といった対策が検討される可能性があります。

2.刑罰への刑則強化
現在の盛土規制法では、無許可の盛土や行政命令に従わないことへの罰則が強化されていますが、それでも違法な造成や無届けの盛土が発生するケースがあります。

無許可造成や禁止行為に対する罰金額の増額(特に法人)
命令に従わなかった場合の行政代執行の拡大(自治体)
違法な盛土を行った業者の営業停止や資格剥奪の可能性
といった点が挙げられます。

3.開発許可の厳格化と審査基準の統一化
現在、宅地造成や盛土の許可基準は都道府県や自治体ごとに異なる場合がある。

国主導のガイドラインを制定し、各自治体が統一的に運用できるようにする
ハザードマップや地盤情報をもとに、特定のリスクエリアでは開発許可を制限する
宅地造成時の排水対策や地盤補強対策の義務化
特に、地震や豪雨による地盤の脆弱化が進む地域では、引き続き規制の強化が求められるでしょう

4.監視・監督体制の強化とデジタル技術の活用
現在、自治体が宅地造成や盛土の監視を行っていますが、監視体制の強化が今後の重要な課題となっています。
特に、監視のための人や予算が不足している自治体も多いため、ドローンやAI、衛星画像を活用した監視体制の整備が進められる可能性があります。

ドローンや衛星画像を活用し、違法な造成や盛土の状況を継続して監視する
AIを活用した自動監視システムの導入
住民や業者による自主的な告発システムの導入
などが考えられます。

5.災害発生後の対応強化と土地利用の適正化
宅地造成の規制強化だけでなく、災害発生後の土地利用についても今後の法改正で検討される可能性がある。

一度災害が発生した地域では、一定期間の再開発を制限する
危険地域の緩和や移転支援を強化し、居住地域のリスクを軽減する
自治体がリスクの高い土地の再開発を管理し、無計画な宅地開発を防止する
といった法改正が検討されています。

6.土地所有者・開発業者の責任強化
これまで、盛土や宅地造成の責任は主に開発業者や自治体に課されていましたが、今後は土地所有者にもより大きな責任が求められる可能性があります。

土地所有者が管理義務を怠った場合の責任強化
開発業者が休業した場合でも、土地の管理責任が他の関係者に引き継がれる仕組みの整備
造成地の維持管理計画の義務化と定期報告制度の導入
これにより、盛土や宅地の管理が適切に行われ、将来的なリスクが軽減されることが期待されます。

 

まとめ

 

とりあえずの宅地造成法改正では、不安定盛土の規制強化、禁止行為への罰則強化、開発許可の厳格化、監視体制の強化、災害後の土地利用制限、土地所有者責任強化といった点が重要な課題であります。
特に、技術を活用した監視の強化や、全国統一の基準の導入が進むことで、より安全な宅地造成が実現されることが期待されます。

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